幸せ



『幸せ』

毎日ゴロゴロして
台所もろくにしない
掃除も洗濯もしない
それでもわたしは主婦

夫が帰るとネコみたいに甘えて
夫のひざに頭をのせたがる

それでとても幸せ

時々急に
台所に駆け込んで嘔吐する

私のおなかには
三ヶ月の赤ん坊がいる

それで
夫も幸せです




『可愛いやつ』

でっかいおなか抱えて
よく働くお前

ときどきふくれて
困らせるときがあるが
お前 本当はやさしいんだね

いままでだいぶ心配かけたが
ゆるしておくれ・・・

とにかく元気な赤ん坊
産んでおくれ




これは私を妊娠中に
父と母との間で交わされたものです。

母が亡くなったばかりの頃
しばらくの間、父は頻繁に
「お母さんは俺と結婚して幸せだったのかな・・・」
と呟いていました。

ある日、私が母の遺品の整理をしている最中に、
父がまた、そう呟いたら、
唐突に、この2つの詩が見つかったのです。

まるで、母が「とても幸せだったよ」と
返事でもしたかのように・・・ 

「可愛いやつ」

こんな言葉は、母が生きていた頃、父から聞いたことはなく
けれど、母を亡くした今
頻繁に父の口から出てくる言葉となりました。

「俺はお母さんが可愛くて仕方なかった」

母が生きているうちに言ってあげたらよかったのに・・・。
そう思っていたけれど
母は父の気持ち、ちゃんと知っていたんですね。



素材:STAR DUST


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