母に捧ぐ鎮魂詩




くちづけたかった
冷たくなっていくその頬に

くちづけたかった
ぬくもりの残るその手の甲に

涙だけがとめどなくあふれて
心の中で
ただ あなたを呼んでいた

私の声を聴いて
この呼びかけにこたえて
もう一度目を開けて
私に微笑んで・・・

そう願い
それと同時に圧倒的な絶望が
その願いは叶わないのだと
無情に告げる

その夜は月も蒼褪めて
猫はお別れの唄をうたい
途切れることのない細糸のような煙は
新たな世界へ続く道の導となった

私の涙で
あなたが溺れてしまわないように
私はもう泣いたりしない
遠く隔たれた時の向こうにいても
あなたと私との縁は
いついつまでも変わらないはずだから

いつか私も
あなたと同じ世界に行くことになる
そのときまで・・・

おやすみ お母さん




この詩は、母が亡くなった時の気持ちを
そのまま言葉にしたものです。

最後の最後まで母の死を考えられなかったから、
冷たくなりつつある母を目の前にして、
ただ心の中で母に呼びかけながら

「取り乱したらいけない」
「取り乱したらみんなを困らせてしまう」
「私は長女なんだから」

と心の中で自分に言い聞かせていました。

もっともっと声を張り上げながら、泣き叫びたかった。
悲しみの涙に飲み込まれて、私こそ死んでしまいたかった。

でも、そんなことは母は望んでいないだろうから・・・

そんな気持ちの中から生まれた詩なのです。



素材:Little Eden


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