はじまりの日



いきなり風邪をひいてしまった・・・。

声はガラガラで、老婆みたいにしわがれてしまっている。私は喘息を持っているので、風邪をひくとすぐに声が枯れてしまう。

かなしい・・・(T_T)

実は、母も体調を悪くしている。
それなのに母は今週の土・日と旅行に行く予定だ。
「さつき会」と命名したグループがあって、メンバーは母の学生時代の友達たちらしいのだが、5月じゃないのに旅行に行くことになっているらしい。

父などはとても心配していて、わざわざ仕事中抜け出して私のPHSに電話をかけてきた。

「俺から電話があったということは言わずに、さもお前の意見のようなふりをして、お母さんに『具合どう?顔色すごく悪いよ。旅行は行かない方がいいんじゃないかな。』と言って来い。」と、セリフまで決めて私に言ってきた。

ああ・・・私はそういうのって苦手なんだよなぁ。

ついていい嘘と悪い嘘と、つかなければならない嘘と、いろいろあるけれど、なんであれ「嘘」は下手だ。

それでも私は「わかった」と返事をして、早速隣家にあたる実家に行った。

だが、母を見るなり顔が無意味にニヤニヤしてきてしまう。
自分で自分があやしい。

『私はここで嘘をつかねばならないのだ。母のためなんだ。』と心の中で思いつつ、しらじらしい自分がどこか滑稽に思えて、結局正直に打ち明けてしまった・・・。

でも、母は旅行を取りやめるつもりなど毛頭なかった。
母は、たとえ命がかかったとしても、自分のやりたいことはやるタイプだ。

私は忠告はしたし、もう寝ることにした。
母はきっと旅行に行って、うんと具合が悪くなって帰ってくるだろう。

そんな予感がしていた。


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