入院・その7
「お母さん、癌だって。」
いつものように仕事が終わり、隣に行くなり妹がそう言った。
「え?嘘でしょ?」
「本当。」
「冗談で言ってるんでしょう?」
「違うよ。」
「・・・・・・・・・・嘘でしょう?」
「本当。」
私は父のほうを見て
「本当なの?」としつこく念を押すと、父は
「お母さんはメルカゾールの副作用じゃないかもしれないんだって。検査してみなくちゃわからないけど、最悪の場合、白血病か膠原病の疑いがあるんだって。」と説明した。
母の容態はいつまでたっても良くならない。
薬疹と思われるものはなくなってきたというのに、相変わらず食べれないし、熱は下がらないし、ちっとも回復しない。
昨日も結局、吐いてしまったらしいし・・・
それで、担当医が仮説を立てたようだ。
熱が下がらないということは、抗生物質を点滴で投与していたため、もしかしたら抗生物質熱であるかもしれない。
これは点滴をやめることで3~4日様子を見て、熱が下がればそうだったということになる。だから、点滴は今日からやめる。
結核の検査は今日行った。結果は数日後に出る。
こんなふうに消去法でひとつづつ可能性を確かめてみて、もしも抗生物質熱でもなく、結核でもなかった場合、あとは考えられる可能性は白血病か膠原病だ。
担当医の説明はこんなものだったようだ。
私は目の前が真っ暗になった。
白血病?
膠原病??
お母さんが???
妹は母がわがままばかり言っていて、元気になろうという気持ちに欠けていると憤慨していたが、私は頭のどこかがボーっとしていて、ぼんやりと『どうして私はボーっとしちゃってるんだろう。なんでもっと落ち込まないんだろう。』なんて考えていた。
明日は食道と胃を調べるために胃カメラを飲むらしい。
もう何も考えたくない。